2023年は世界で観測史上最も暑い年でした。昨年、日本においては過去2番目に熱中症の搬送が多い年となりました。残念ながら、今年も、そして、来年も、日本の夏の最高気温は毎年更新されていくでしょう。今、人為的に生み出されたCO2の増加が引き起こした地球温暖化への対策を社会も政治も先延ばしにし続けてきたつけが顕在化しています。
私は2002年生まれで、温暖化だけでなく、これから起こりうる気候変動による様々な被害を受ける世代です。だから、一つの重要な分岐点とされる今から2030年までに行われる気候変動対策の成否が自分たちの未来に直結すると強く認識しています。
ターニングポイントに立つ今、気候変動対策に対して、政治家がどのような決断を下し、行動を行うのかが問われています。私の住んでいる小選挙区東京18区で立候補を予定する3人の衆議院議員候補者は気候変動に対してどのような政策を考えているのか、インタビューしました。

今回、インタビューをさせて頂いたのは、自由民主党の東京都第18選挙区支部長である福田かおるさんです。

福田かおるさん プロフィール
自由民主党 東京都第18選挙区支部長

昭和60年生まれ(39歳)。東京大学法学部卒、米国コロンビア大学大学院修了。
国際機関 ・バングラデシュなどでインターン、元農林水産省職員(内閣府、観光庁にも出向)、元JETROバンコク事務所農林水産・食品部長。
元齋藤健法務大臣秘書官。元NPO法人代表。
2023年3月に公募で選ばれ、選挙区支部長として、武蔵野市、小金井市、西東京市で活動中。

削除目標2030年46%削減(2013年度比)、2050年ネットゼロを維持
化石燃料できるだけ早期に減らしていく。将来は火力発電を再エネの変動に対応するための調整電源とする。
原子力原発のない社会になればいいと思うが、将来の再エネ等の技術発展次第。最終処分の問題や災害時の対応について答えを出していきたい。
再エネ政府の目標値を目指すが、多ければ多い方がよい。負の側面を払拭していくルールづくりが必要。
GX計画前に進もうとしていることを高く評価。一方、新技術の投資は社会実装や普及段階にボトルネックがあり、監視と修正の繰り返しが必要。

日本の気候変動対策に対する現状認識

日本の気候変動対策の現状をどのように捉えていますか?

大学生の時に環境活動を行なっていた時期があり、様々な会社に対して環境対策に関するインタビューを行ったり、全国の環境活動サークルのコンテストを開催したりしました。今回のインタビューでは当時のことを思いだし、懐かしくなりました。

さて、2023年度に温室効果ガス46%削減、2050年度にカーボンニュートラルという日本の目標に対して、オントラックで進んでいること、確実に進捗していると認識しています。これは政府だけでなく、多くの方々の努力の結果です。

一方で、物事の本質な目的を見失ってはいけないと思います。世界に目を向けると、社会混乱やインフレの中で、環境対策も理想論から人々の生活とバランスのとれた現実論にシフトしつつあります。環境対策を先導するヨーロッパでも、原発をクリーンエネルギーに含めることとなったり、EVシフトの見直しもされました。日本においても、太陽光発電は今のままでいいのかという声もよく聞くようになりました。山肌を削って作るメガソーラーの環境破壊の問題、パネルに使われる鉱物が採掘される際の人権問題など、太陽光発電の負の側面にも注目が集まっています。どの発電方法にも負の側面はありますが、きちんと向き合っていく必要があります。次世代に良い環境を残したい、善意で行ったことが結果として森林破壊や人権侵害などにつながってしまってはいけないと考えています。

2030年のCO2削減目標

日本の2030年のCO2の削減目標について、どうお考えですか?

今の目標は野心的な目標なのだと思います。今はとにかくこの目標を達成することに力を尽くす段階だと思います。現時点では、これ以上、目標を上げるのはなかなか難しいと思いますが、多くの方々の努力でオントラックで進んでいるので下げるべきものでもありません。今後も継続して結果を出していくことができるか、が重要です。

2030年に向けたエネルギーミックス

この削減目標を実現するためにも、日本において、2030年に向けて、各電源についてそれぞれ増やすべきでしょうか、減らすべきでしょうか?どのようなエネルギーミックスをお考えでしょうか?

再エネについて

太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーを増やしていくということが既定路線だと思います。2030年度の政府の目標値が参考になると思いますが、もちろん多ければ多い方がいいと思います。

しかし、先ほども述べたように、だからと言って、環境破壊、人権侵害、他国への負担の押付けになってはならないと思います。そのためには再生可能エネルギーに限らず、どんな発電源もサプライチェーン全体を見て、負の側面を払拭していくルールづくりを行い、より良い方向へ持っていく必要があります。

化石燃料について

CO2を大量に排出する石炭火力発電についてはできるだけ早期に減らしていくことが既定路線だと思います。
ただ、現状、火力発電は電源構成の7割を占め、その中でも、石炭火力は約3割を占めているので急にゼロにするのは困難です。それでもできるだけ減らし、将来は火力発電を再エネの変動に対応するための調整電源とするのが理想だと思います。化石燃料を減らすという絵はあっても、完全に置き換えられるという絵がまだ描けていないというのが現状です。

現在、検討が進められているアンモニアや水素の混焼についても、移行段階の石炭火力の脱炭素化を進める意味で検討はそれなりに意味があると思います。こうした電源もやはり他の電源と同様に、脱炭素化への効果とともに、社会的な側面でも問題が生じていないかどうかをチェックし続けなければいけないと思います。

原発について

原発は無くせるなら無くしたい、頼らなくていいなら頼りたくないと思う人がほとんどだと思います。
原発事故が起きた当時、私は国交省の観光庁に勤めていて、事故直後は福島の観光業の支援事業を担当していました。福島第一原発の事故や東日本大震災は私の社会人人生の中で大きな原点の一つです。あのような事故をもう二度と起こしてはいけませんし、原発のない社会になればいいと思います。

脱炭素を実現しながら安定的に電力を確保するためには、現状では原発が無視できない存在であるのも理解しています。
原発に対する意見は様々ありますが、原発を今すぐ無くすことができると宣言するのは無責任です。これから、再エネ、省エネ、技術開発を進めていく中で、日本だけではなく、世界が原発と決別できるようにできるのが理想だと思います。脱原発のロードマップについては、今後の発電技術のブレイクスルーがあっての話だと思いますので、具体的に言及するのは難しいと思います。

一方、原発に関しては、最終処分の問題や災害時の対応といったリスクへの対応方法について、私たちの世代で答えを出していかなければならないと思います。

GX政策の評価と課題

日本では、温室効果ガスの削減やエネルギーのあり方について、経済産業省主導のもとGX(グリーントランスフォーメーション)が目玉政策として掲げられていますが、この政策について評価している点・課題だと思う点を教えてください。

GXの政策では官民で150兆円を10年間で投資しようという計画を立てています。
まずは20兆円を政府で投資することとなっています。大きなお金が動いていますが、効果のある投資を行わないといけません。今まで政府の中で働いていた身として思うのは、こうした新規技術投資については、特に社会実装から普及段階に大きな壁があるということです。大きなお金を投じてもそれが実際に普及していくまでには、第3者も含めた監視と修正の繰り返しが必要だと思います。

もちろん前に進もうとしていること自体はすごく評価しています。世界中で脱炭素社会への移行は市場とセットで動いており、産業界も巻き込んでいろんなことをやって行かなければいけせん。

ご質問のあった水素については期待が高まっていると承知しています。水素も原発も脱炭素の文脈で効果があるのかという点だけでなく、脱炭素以外の文脈でもどのような影響があるのかを見なければいけないと思います。今よりもより良い選択肢があれば選択し、少しずつでも進歩していくべきです。 

また、現在第7次エネルギー基本計画が議論されていますが、今後考慮しなければいけないと思うのは、EVシフト、5GやITなどの増加によって電力需要が増加していくということです。私たちの生活の利便性が向上していく中で、電力需要の変化を予測し、エネルギーミックスに修正をかけていかなければいけません。

地域の誠実さと共に進む気候変動対策

ご自身が考える気候変動対策を実現するために、日本政府及び東京18区の自治体が行うべき対策と、その課題をどのように捉えていますか?

この地域(武蔵野市、小金井市、西東京市)で、ミニ集会などの機会に地域の方とお話しして感じるのは、地域の課題や社会課題に誠実に向き合っている方がすごく多いということです。
政策にも関心を持って勉強している人が、中学生も高校生も含めて多いです。これから気候変動対策を行っていく中で「この発電技術に脱炭素効果は本当にあるのだろうか?」や「この技術を普及していく際の副作用には、どのようなものがあるのだろうか?」といった疑問を持って議論と勉強を行い、解決策を考えていかなければいけないと思うのですが、そのために必要な土壌があります。

こうした社会への誠実な思いに応えられるように、私はなかなか報道では得られないような国際レベルでの議論や情報をみなさんと共有し、一緒に議論を行い、政策を考えていきたいと思っています。

どんな政策でも、予算、実現可能性、負の側面が社会に与えるリスクなど、考えるべきことは多いのですが、一番大事にしなければならないのは、政策の魂の部分です。「こういう社会を作りたい」という思いの部分がないと何も始まりません。この地域はその魂の部分を持っている人が多く、本質的な議論を重ねていく土壌が整っています。

日本の良さを再認識して:次世代に残すべき環境への思い

最後にコメントをお願いします。

私はこの7年間で約21カ国に行ったのですが、その中でやっぱり日本はすごくいい国だなと思いました。
様々な理由がありますが、日本人は全体的に働き者であり、その人々が社会を繋いできたということ、美味しいものがあること、そして、みんなで助け合っていこうとする風潮があることなどが大きいです。そして、こうした社会を、自分の家族だけでなく、私の知らない人も含めて、様々な方々が私たちの世代に繋いでくださったということだと感じています。自分もそういうふうに、日本社会を次世代に繋いで行ける存在になれたらいいなと思っています。環境の議論についても、「本当に次世代に残していきたい日本の環境とはなにか」ということを大事にしながら、気候変動対策を様々な視点から検討し、社会や自然環境に及ぼす負の側面を取り除いていきたいと考えています。気候変動対策の多様な側面に誠実に向き合うことで、本当に残したかった環境を次の世代につなげられるのではないかと思っています。

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About the Author

芹ヶ野瑠奈

2002年杉並区生まれ、武蔵野市育ち。早稲田大学政治経済学部3年。後輩から誘われたことをきっかけに高校生の時から気候変動活動を始める。気候変動についての世論喚起を行う活動やメガバンクの化石燃料への投資を止めることを要求する活動を行う。今は若者の声を政治に届ける超党派のアドカシー団体である日本若者協議会で若者の政治参加、ジェンダー、そして気候変動の問題に関する政策提言活動を行っている。暇な時は友達と武蔵野中央公園でのんびりしている。

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About the Photographer

山田奈緒子

Co-Founder

武蔵野市関前在住。広島県で生まれ育ち、結婚を機に東京へ。うつ病等を患ったり、近所に話せる人がおらず孤立していた経験から、地域のつながり作りに興味を持ち、地域の「居場所」の情報を載せたマップ作りの活動に参加。様々な活動を通して知った沢山の人たちのストーリーを誰かに届けられたらと思い、MMの立ち上げに参画。「作ろう!みんなのジモト Wa-shoiパートナーシップ」世話焼き人。 武蔵野市のおすすめスポットはクラフトハウスばくです。玄米ランチが食べられてゆるゆる過ごせてイベント盛りだくさんのコミュニティスペース?のような、不思議な空間です。わりといつもここにいます。