2023年は世界で観測史上最も暑い年でした。日本においても昨年は過去2番目に熱中症搬送が多い年となりました。今年はさらに暑い夏がやってきています。
そして、日本の夏の最高気温は毎年更新されていくでしょう。筆者は2002年生まれであるため、先が思いやられます。自分の未来は今行われる行動によって大きく左右されます。そして、この重要な分岐点で政治家がどのような決断を下し、行動を行うのかが問われています。
私の住んでいる小選挙区、東京18区の衆議院議員候補者は気候変動についてどう思っており、どのような気候変動政策を持っているのでしょうか?今回のインタビューシリーズでは3人の候補者に気候変動についてインタビューしました。
一人目にインタビューを行うのは日本共産党の東京18区の衆議院議員予定候補者である樋口まことさんです。
樋口まことさんプロフィール
日本共産党 武蔵野三鷹地区委員会副委員長
1987年(昭和62年)足立区生まれ、葛飾区出身。都立南葛飾高等学校卒業。
2014年から日本共産党葛飾地区委員会勤務。2017年、2021年葛飾区議選に立候補。
2022年から日本共産党武蔵野三鷹地区委員会勤務。
2023年6月から衆議院東京18区予定候補。
趣味は囲碁(二段)、プロレス観戦。
削除目標 | 2030年60%削減(2010年度比)、2050年CO2排出ゼロ |
化石燃料 | 2030年までにはゼロを目指す。トランジションにLNGを使用。 |
原子力 | 原子力発電は直ちに廃止、再稼働はさせない。停止しているものも廃炉まで持っていく。 |
再エネ | 2030年までに電力の50%を再エネに。自治体主導で小規模分散型の再エネを主流に。 |
GX計画 | 化石燃料から再エネへの移行が不十分で、原発回帰のものとなっているため、評価せず。 |
日本の気候変動対策に対する現状認識
日本の気候変動対策の現状をどのように捉えていますか?
10年以上前に民青同盟(日本共産党が活動のアドバイザーの青年組織)での活動で地球の気温の上昇を1.5度未満に抑えられるかが勝負であることを知り、上昇を止められないことに対して衝撃を受けました。気候変動は個人の問題ではなく、政治社会が取り組まなければいけない問題だと思っています。
今の日本のCO2削減目標は低すぎます。石炭火力にも頼りすぎていますし、原発と核のゴミの問題がまだ残っています。アンモニア・水素混焼を全ては否定しませんが、実現の目処がない技術に時間をかけている場合ではないと思います。そのため、省エネと再エネにもっと力を入れるべきです。今の日本政府はまだ本気ではないと捉えています。
2030年のCO2削減目標
日本の2030年のCO2の削減目標について、どうお考えですか?
共産党としては2030年に60%削減する目標を掲げています。2030年までにどれほど削減するかが勝負であり、2050年までには実質ゼロにすることを目指しています。
2030年に向けたエネルギーミックス
この削減目標を実現するためにも、日本において、2030年に向けて、各電源についてそれぞれ増やすべきでしょうか、減らすべきでしょうか?どのようなエネルギーミックスをお考えでしょうか?
再生可能エネルギーだと2030年までに電力の50%をまかなうことを党の目標として掲げています。太陽光は自治体レベルで行い、風力、地熱は日本の条件に応じて行うべきだと思います。国がドンと大きい電力を作るのではなく、自治体主導で小規模分散型の再エネが主流になっていくべきです。
また、日本は技術はあるのでさらに技術の開発をさらに行い、それを生かすべきです。環境省も再生可能エネルギーの条件は揃っていると述べているので十分まかなえると思います。
一方で再エネを増やすための乱開発や森林伐採などは取り締まる必要があると思います。ポテンシャルがあるのにも関わらず、再エネは22%しか日本の電力を占めておらず、政府はまだ再エネを増やす明確なビジョンもありません。再エネの明確なビジョンが必要だと思います。
原子力発電は直ちに廃止し、再稼働はさせない。停止していても地震などの危険性があるので廃炉まで持っていく必要があります。今動かしているものは直ちに止め、少なくとも2023年までにはゼロにしたいと個人的に考えています。
石炭火力発電も2030年までにはゼロを目指します。LNGについては当面は石炭火力からのトランジションの術として使う必要があると思います。
GX政策の評価と課題
日本では、温室効果ガスの削減やエネルギーのあり方について、経済産業省主導のもとGX(グリーントランスフォーメーション)が目玉政策として掲げられていますが、この政策について評価している点・課題だと思う点を教えてください。
GXの計画についてはあまり知らなかったのですが、調べてみるとびっくりする内容でした。GXの計画には次世代革新炉の新設についても書かれていて、本来は化石燃料から再エネへの移行を行うべきなのに原発の政策が入っているのにびっくりしました。
核のゴミも大幅に保管年を10万年から300年に削減できると計画には書かれているがやはり保管年数は長いです。そういう点でGXは本気で化石燃料から再エネへの移行をしようとしておらず、原発回帰のものとなっているため、全く評価していません。共産党はGXの法案も反対の立場です。
お金の問題もGXの議論の場で関わってくると思います。
今のGX計画は原発で利益を上げたい人など、一部の利益に応えるものになってしまっていると思います。GXを議論する有識者には環境問題に関わっている教授や専門家はもちろん、気候変動活動に関わっているFridays for Futureなどの若い人なども巻き込むべきです。
また、GXにはパブリックコメントもあるけど周知が足りないという批判もあります。GXをもっと開かれた国民的なものにする必要があります。
市民会議の重要性と東京都の課題
ご自身が考える気候変動対策を実現するために、日本政府及び東京18区の自治体が行うべき対策と、その課題をどのように捉えていますか?
くじ引き式で市民を集めて議論をする気候市民会議はとても大事な取り組みです。
武蔵野市でも気候市民会議を行いましたが、やった上でどうするかが重要だと思います。気候変動対策を市民的なものにするのが大事で第一歩だと思います。自治体単位での目標を決めてそれに向かって取り組んでいくのが大事です。
しかし、東京都の対応が国と変わらない姿勢になっているため、東京都の気候変動政策は問題ですね。一つは超高層マンションに建て替える再開発ですね。麻布台ヒルズの再開発など。大企業、投資家、超富裕層のための再開発。
その一方では神宮伐採。他にも小池都知事は水素事業を進めていますが、野党第一党である共産党都議会はグレー水素は化石燃料由来のものなので止めるべきだと批判しています。
今年度東京都は水素促進関連事業に約38億 を投入する予定です。逆にやるべきこととしては都として気候市民会議を開催すべきだと共産党都議会は提案しています。他にも、再生可能エネルギー促進事業や60億円をかけて都営住宅への太陽光設置事業を拡大するなど、都としてもっとできるはずです。それなのに気候危機に寄与しない再開発や水素事業を都は行なっています。東京都の排出量削減は不十分です。これは大きな問題であり、共産党としてももっと取り組むべきだと思います。
樋口まこと氏が語る資本主義の限界と未来への希望
最後にコメントをお願いします。
気候変動は個人の問題ではなく、政治社会が取り組まなければいけない問題です。究極的には今の社会を変えていくことが必要で、気候危機が起きないような社会がまっとうな社会です。このような自制が働かないような社会はゴールではありません。
国も気候危機を認めているのになぜ真剣に取り組めないのでしょうか。その根本は利潤第一主義の資本主義だと思います。カール・マルクスも「大洪水よわが亡きあとに来たれ」と言っているように、利潤第一主義の資本主義というシステムが気候危機を引き起こしたのです。
このように自制が効かない社会ではなくて、まずいなと思ったら自分達で押さえ込み、変えていけるような社会になるべきです。私たち共産党はまずは資本主義のルールの枠内の中で一部の資本家ではなくて私たち一人ひとりの利益につながる社会に変えていこうとしています。
しかし、私たち共産党は資本主義の次の社会、社会主義を目指しています。世界でも資本主義を疑問視する声が上がっています。今の社会、経済のあり方で本当に気候変動の問題は解決できるのか。変革を起こすのには時間がかかるとは思いますが、この問いを変革の希望として捉えています。
残された時間がどんどん短くなっています。一刻の猶予も許されません。私も今年37になる。これから生まれてくる人たちにこの問題を渡せない、渡してはいけません。それは一人の大人としての責任でもあります。同じ思いを持つ皆さんと一緒に関わらないといけないと思います。