金子達也さん プロファイル
パタゴニア東京・吉祥寺勤務。2008年、パタゴニア・インターナショナル・インク日本支社に入社。複数の店舗を経験した後、吉祥寺ストアに2017年より勤務。吉祥寺を中心とする武蔵野エリアのサステイナブルな発展に尽力している。趣味はキャンプ、テレマークスキー、テンカラ釣りなど。学生時代には、冬の北海道を自転車で宗谷岬まで走破。社会人になってからもアラスカのデナリの登頂を果たすなど、自然と親しみつつ、チャレンジを続ける。
2020年にフェアトレードタウン宣言を目指して
MM 山中: パタゴニア東京・吉祥寺ストアの活動を教えてください。
パタゴニア 金子:吉祥寺ストアでは、主に「フェアトレードの推進」と「気候危機への対応」を大きな活動の軸としています。
「フェアトレードの推進」では、武蔵野からフェアトレードの普及とフェアトレードタウンを目指し、現在、市内のオーガニック系のショップ、市民活動団体、関心のある市民など、様々な方々と、「フェアトレードむさしの」というネットワークを作り、活動をしています。オリンピックのある2020年に、武蔵野市でフェアトレードタウン宣言できるようにコアメンバーを中心に市内のいろんな方と一緒に日々活動を行っています。
2020年の2/16には、「フェアトレードむさしの」と「成蹊学園サステナビリティ教育研究センター」の共催で「フェアトレードフォーラム・むさしの2020」を開催しますのでぜひ、足を運んで頂けるとうれしいですね。ぜひ一緒に盛り上げていきましょう。
私たちがフェアトレードの推進をする理由は、「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」というミッションステートメントのもとで、企業としての責任を全うする為です。パタゴニア製品が作られる過程で、顧客、従業員、パートナー企業、地域社会、環境に与える影響に責任をもたなければなりません。価格や品質を追求するために児童労働、低賃金での労働を強いることや環境破壊に繋がることを行ってはいけません。むしろ、製品が作られる過程に係わる人や環境が豊かになるようなものでなければならないと考えています。フェアトレードは、ウェアはもちろんコーヒー、チョコレートなど、わたしたちが日々消費している多くのものを対象にしており、原材料の調達、加工、販売などサプライチェーンの全体で、自由、公平・公正、多様性のもとで、生産者が持続的な生活を営めることを保証する考え方であり、我々のミッションと合致するためです。
2025年までに再生可能エネルギー100%
MM 山中:もう一つは「気候危機への対応」ですが、こちらはどのようなことをされていますか?
パタゴニア 金子:パタゴニアは、近年、相次ぐ巨大台風や豪雨などの異常気象は気候変動によるものであり、もはや未来のことではなく、身近に起きている危機、つまり「気候危機」と捉えています。気候変動に大きな影響を与えている石炭火力発電などの化石燃料由来の電力から、二酸化炭素を出さない再生可能エネルギー由来の電力の利用にシフトしていきます。2020年末までにオフィスや店舗で使用する量の電力を100%再生可能エネルギーに切り替え、2025年までに事業全体で二酸化炭素ネット排出量をゼロにする「カーボンニュートラル」を達成することを目標としています。他の企業でいえば、日本の企業ではまだ少ないですが、グローバルの企業では、メジャーな企業が「RE100」として宣言をしており、2019年10月時点で204社にのぼります。
パタゴニア日本支社でも、2020年までにオフィスや店舗で使用する量の電力を100%再生可能エネルギーに切り替え、2025年までに事業全体で二酸化炭素ネット排出量をゼロにする「カーボンニュートラル」を達成するとことを発表しています。
また、これも武蔵野エリア固有のものではありませんが、気候変動に対する具体的アクションを訴えるために行われる、「グローバル気候マーチ」*に参加するスタッフをサポートしています。
さらには、「私たちの地球のために投票しよう」と、先の参議院議員選挙では、選挙前に「選挙カフェ」を開催し、選挙日当日に全店を閉店しました。本当に多くの方々から、私たちの活動をサポートする声を頂きました。
*1 RE100とは「Renewable Energy 100%」の略称で、事業活動で消費するエネルギーを100%再生可能エネルギーで調達することを目標とする国際的イニシアチブを指します。
*2 「グローバル気候マーチ」とは、気候変動・温暖化に具体的な政策・行動を求める国際的なストライキ、また抗議行動。この一連のアクションは、スウェーデンの気候活動家グレタ・トゥーンベリに共感した人たちの、 気候変動に対する学校ストライキの一貫でもある
あらゆるアウトドアスポーツに挑戦した大学時代
MM 山中:どのような子供時代、学生時代を過ごしましたか?
パタゴニア 金子:小さい頃から、自然が好きでした。両親によくスキーやキャンプに連れて行ってもらい、自然を多く感じられる環境の中で育ちました。
中学・高校とテニスに没頭しましたが、大学進学で専攻を選ぶ際に迷うことはありませんでした。自然が好きで、どこかで環境問題について学びたいと思っていました。その中でも、当時、砂漠化に高い関心を持っていたので、それを学べる東京農業大学を選びました。
人と違うことをとことんやる
MM 山中:志望理由が明確ですね。大学では研究に没頭したのですか?
パタゴニア 金子:研究ではなく、アウトドアスポーツに没頭しました(笑)
尊敬する先輩から「学生時代に人と違うことをとことんやれ」と言われ、キャンプ、登山、クライミング、チャリ旅など、とにかく、アウトドアで遊びました。南・北アルプスもよく歩きましたね。
一番の経験は、冬の北海道を走破したことですかね。2週間かけて、宗谷岬まで行きました。
道中、ひどい豪雪に合い、危険な目にも合いました。夏にはアメリカの国立公園や東南アジアにもバックパックで回りました。
MM 山中: 危険な目に合ってそこまでとことんやる理由は何ですか?
パタゴニア 金子:なんですかね。自分でもよくわかりませんが、やっぱり自然と向き合う、そして人生と向き合う時間を持てることではないでしょうか。
パタゴニアで働くということ
MM 山中:学生時代のお話しを伺っているとパタゴニアで働くことが必然のような気もしますが。
パタゴニア 金子:そうですね。大学4年から、パタゴニアでアルバイトとして働き始めました。もともとスーツ姿で所謂オフィスで働くことはイメージできませんでした。好きなアウトドアと環境問題に取り組める、そんな仕事をなんとなく探していました。そんな時に、創業者が書いたイヴァン・シュイナードが書いた「社員をサーフィンに行かせよう」を読んでここだと思って、パタゴニアに応募しました。
MM 山中:入ってギャップはありませんでしたか。
パタゴニア 金子:全くありませんでした。本当に1カ月休んでサーフィンに行く人がいましたし(笑)
私も、入社してから、長期休暇をとってアラスカのデナリを登頂したこともありました 。
MM 山中:自由ですね。。。本当に羨ましいです。
パタゴニア 金子:そうですね。その分、責任も伴います。パタゴニアには、ルールやマニュアルがあまりありません。お客様、社会・環境のために、必要なことを自分で考えて行動する必要があります。正解は一つではない為、ものすごく考える必要がある。本当にこれでよいのか、新人は先輩のやり方を見よう見まねで学びながらも、自分なりのオリジナリティを加え、自分なりの接客方法を身に着けていくわけです。そこに自由と責任があるわけです。結構、厳しいですよ。
お客さま、社会、社員と一緒にビジョンを実現していきたい
これまで、アウトドアをやる方、環境に配慮された製品を長年愛用して下さっているお客様が大半でしたが、最近は、ファッション性に共感して来店されるお客様も増えています。私たちは、一人でも多くのお客様に、来店を機に環境問題に興味を持って頂き、一緒に地球を守る仲間になって欲しいと思っています。
この吉祥寺ストアが買物する場で終わるのではなく、お客さまにとって、新しい価値観、行動様式に繋がっていくきっかけとなる場にしたいですね。そのために私たちもさまざまな形でお客さまとコミュニケーションを取っていきます。
編集後記
本当にこんな企業が実在するのかと、正直、驚きました。昨今、SDGs起点でビジネスを考える動きが企業に広がってきていますが、まだまだ表面的、形式的なところが大半であるように思います。パタゴニアは違います。本気で地球のことを考え、そのための手段としてビジネスを捉え、行動しています。吉祥寺ストアはフェアトレードタウンを広げる基地になり、新たなムーブメントを創りだそうとしています。2020年オリンピックの年にフェアトレードタウン宣言が実現するようにみんなで応援したいと思います。
2020年2月16日(日)には「フェアトレードフォーラムむさしの2020」が成蹊大学で開催されます。13時から16時半まで情報盛りだくさんのイベントです。ぜひご参加ください。