ロービジョンフットサルという競技をご存知だろうか。

弱視者(ロービジョン)一人ひとりの異なる視力・視野を生かし、お互いを補い合いながらプレーするサッカーのことだが、武蔵野市を起点にロービジョンフットサルを通して、誰もがいつでもどこでもスポーツを楽しめる環境づくりを推進する、CLUB VALER TOKYOの代表である加渡さんにお話しを伺いました。

加渡主悟(かど じゅお)さん プロフィール
CLUB VALER TOKYO代表 ロービジョンフットサル 日本代表強化指定選手。

小学生でサッカーを始め、都立のサッカー強豪校に進む。卒業後、ドイツにサッカー留学し、4部リーグのクラブチームでプレーをする。契約解除後、日本に帰国、立教大学に入学。在学中に、ロービジョンフットサルに出会い、CLUB VALER TOKYOを立ち上げ、現在に至る。吉祥寺をこよなく愛し、ハモニカ横丁が第二のホームグランド。

CLUB VALER TOKYO
https://valertokyo2020.wixsite.com/club/members
https://www.jfa.jp/grass_roots/partner/gr_VALER/

団体を立ち上げた経緯を教えてください。

私は、練馬の関町に小学校4年生の時に引っ越してきて、転校生だったので、友達を作るために、サッカーを始めました。その後、サッカーに熱中するようになって、高校では都立の強豪校に進みました。残念ながら、都内ベスト8に終わったのですが、進学しても学びたいことがないこと、漠然と海外でプロ選手になる夢を頂き続け、卒業後、渡独します。

サッカー留学だったのですが、そこで、何とかプロになるために、自分でアポを取って、いろんなクラブチームに売り込みにいき、なんとか4部のクラブチームと契約を結ぶことができました。

ただ、やはり、簡単な道のりでなく、 残念ながら、契約は一年で打ち切りになりました。一年でしたが、ドイツで過ごした経験が団体の立ち上げに大きく影響しました。

ドイツでは、社会統合の場として、地域の総合スポーツクラブ(サッカー、ハンドボール、体操、チェス、野球、バスケなど)がありました。それは、移民の背景や身体的に不自由をもつマイノリティの方も含め、すべての地域住民に開かれた、コミュニティを繋ぐ場として、機能するものでした。

総合スポーツクラブには、バーが併設されており、スポーツが得意か否かはあまり関係なく、コミュニティの活動の場となっています。週末には、みんなが総合スポーツクラブに集まる、そんなイメージです。どんな境遇にある人にとっても、スポーツが起点になって、幸せな気持ちになれる、今までもってきた競技としてのスポーツに対する認識が大きく転換する機会になりましたね。

日本では、競技単位の地域スポーツクラブはありますが、コミュニティを繋ぐ拠点のような位置づけではありません。Jリーグが、地域コミュニティを意識した取組みをしていますが、あくまで単独の競技での取り組みに留まっています。ちなみに、ロービジョンフットサルと出会ったタイミングはどこだったのでしょうか。

そうですね。契約打ち切り後に、日本に戻ってきて、大学に入学することにしたんです。ドイツでの経験から、スポーツとコミュニティの関係、Wellbeingについて学びたいと大学に進学しました。大学2年の時に、ボランティア活動に従事している人が登壇する授業があり、そこで、パラスポーツの話をされる方がいらっしゃり、”なるほど・・、こんなアプローチがあるんだ”、明確な理由はなかったのですが、妙に自分の中で腑に落ちたんです。

ドイツにいたときに、パラスポーツ自体は認識していましたが、改めて、その授業から、「障がい者×サッカー」の可能性を感じて、自ら調べ、日本ブラインドサッカー協会に連絡したんです。そこから、いろんな縁を頂き、強化指定選手に選ばれたのが直接的なきっかけです。

今は企業で働きながら、団体を運営されていると伺いましたが、どのような経緯で今に至ったのでしょうか。

大学3年の時に、再度、ドイツのフランクフルトに留学しました。そこで、フットサルの1部でプレーしたりして、充実した日々を過ごしていたのですが、コロナ禍でやむを得ず帰国せざるを得ない状況になりました。

帰国後、何かできないかと思い、その時点で、今の団体を立ち上げたのですが、大学3年生ということもあり、周りは就活動真っ只中。立ち上げメンバーの多くも就活をする中、自分は、一斉に就活をするという文化に馴染めず、流されたくない、信じるビジョンの実現に向けて、”就活は必要ない”というポリシーでいました。

でも、”自分が就活をしないで、就活そのものについて、批判する権利はない”、と思い、就活を始めました。
また、ドイツで自らがプレーしたサッカーチームもそうですが、地域の総合スポーツクラブの運営においても企業がスポンサーとして運営をサポートしており、地域のスポーツクラブを支える企業プレゼンスの大きさを見てきました。

だから、就職するなら、企業サイドから地域貢献のあり方を考えてみたいと考えるようになりました。そんな中で、今、勤務している企業が、他の人にはない尖った何かを持っている学生を採用するナンバーワン採用を行っていることを知り、応募した結果、お陰様で採用して頂くことになりました。配属先も希望通り、企業の社会的責任を果たすことをミッションに持つ、社会貢献・サステナビリティの部門に配属され、今は、資源循環・生物多様性への対応、地域貢献活動の企画・運営等を担当させて頂いています。

加渡さんの団体での活動の展望を教えてください。

やはり、自分が描く未来の中心にドイツで見た地域のスポーツクラブを姿があります。

また、学生時代に、東ヨーロッパや南アメリカを回ったのですが、そこで、スポーツを通して、現地の人々とコミュニケーションをとって仲良くなることができたんです。誰でもいつでもどこでもどんな形でもスポーツができる、そんな環境があることは人と人のつながりを作り、人が生きる喜びを生み出すのではないかと考えています。

今は、ロービジョンフットサルを中心に活動していますが、CLUB VALER TOKYOに連絡すれば、地域スポーツで何かできる、そんな環境を作っていきたいと思います。そして、私は、武蔵野・吉祥寺が大好きなので、若い世代を巻き込みながら、この地域でその思いを実現していきたいですね。


【全世代対象】
ウォーキングフットボール

走るのなし!接触なし!未経験でも年齢に関係なく楽しめる!
[トライアル期間中 無料]

開催日時:6/21(土)11:00~13:00
対象:誰でも参加可能
定員:20-25名
場所:武蔵野市 緑町スポーツ広場(市役所南側)
武蔵野市緑町2-2-29
お申し込み:お申し込みフォーム

About the Author

山中敦志

Co-Founder

武蔵野市吉祥寺北町在住、一児の父。学生時代にアメリカに留学、市民主体の自治に関心を持つ。 企業で環境・社会関連の業務に従事する傍ら、地域から自然エネルギーの普及を目指す、 NPOむさしの市民エネルギー(むーそーらー)やNPOみたか市民協同発電で地域活動を行う。 市民、市民団体、行政、企業の接点を創出し、社会的課題の解決すべく、MMの立上げに参画する。 武蔵野市のおすすめスポットは市役所隣の市民公園です。週末には市民公園の奥にあるフットサルコートで息子と近所の子供たちとサッカーをしています。

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About the Photographer

上澤進介

Co-Founder

武蔵野市関前在住、二児の父。1976年神奈川県川崎市生まれ。栃木県鹿沼市育ち。多摩美術大学を卒業後、建築設計事務所、広告制作会社を経てWeb制作会社を起業。子育てのために武蔵野市へ転居。会社も武蔵野市に移転して職住近接を実現。地域活動に関心をもち2017年2月から武蔵野市「地域をつなぐコーディネーター」の一期生としてコミュニティ活動に関わる方々と学びを深めている。 武蔵野市のおすすめスポットは三鷹の堀合遊歩道から中央公園へ続くグリーンパーク緑地です。子供たちと遊びながら中央公園へ向かうのが楽しいです。