吉祥寺・武蔵野に、小学生が自らの手で作る街づくりイベントがあるのをご存知でしょうか。このイベントを企画・運営するのが、Teens Town むさしの。
子供の職業体験と言えば、一日体験のキッザニアのイメージがあるが、Teens Town むさしのでは、企画から運営まで、全て小学生が完結させる。それをフォローするのが、地域の大人であり、地域の学生です。
自らも、かつて小学生の時、Teens Town むさしのの前身である、むさしのミニタウンに参加し、大学生の時に、Teens Townむさしのを立ち上げた代表の神村美里さんとコアメンバーに立上げの経緯からTeens Townむさしのの今、そして、これからについて、話しを伺いました。
12/19-27 オンラインワークショップの参加者募集中!
詳しくは下記のリンクをご覧ください。
変化の早い時代に、こどもたちには地域で「主体的に考える力」「市民性」を育んで欲しい
MM 山中: 活動内容について教えてもらえますか?
神村: 子どもたちがまちを模したブースで働き、遊び、社会の仕組みを学び、多様な職業を知る事のできるイベントを企画、運営しています。
変化の早い時代を生きる子どもたち。様々な社会課題がある中で、持続可能な暮らしをするためには、私たち一人一人の選択が問われています。
子供たちには、学校や家庭では教えにくい「主体的に考える力」や「市民性」を育む機会が地域に必要だと考えています。
また、子どもたちが育つ環境に、家・学校以外の誰かと気軽に話したり、他者の価値観や考え方を知る機会は多くありません。
親や先生のような「縦の関係」や友達同士の「横の関係」ではない、地域の「ななめの関係」を作り、子どもたちの世界を広げたり、まちを一緒に考えはぐくんでいくことが大切だと考えています。
このように、地域の大人やお兄さん、お姉さんとの関係を作れる場がTeens Townむさしのにはあります。
コロナ禍でも場づくりを継続するために、12月に完全オンラインイベントの開催を予定しています。
市内の小学生には、オンラインですので、気軽に参加して欲しいですね。 イベントを企画、運営しているのは、私と今日参加しているコアメンバーを含めて、6人程度+学生ボランティアですコロナになってから、オンラインでの会議が多いのですが、地域を超えて参加してくれる学生さんも増えてきています。
「【おしごと体験ワークショップ】TeensTownむさしのオンライン~きみだけのお店をつくろう!~」についてはこちら
小学生時代の原体験がTeens Townむさしのへ、親世代から引き継ぐ子供による街づくり
MM山中: 大学生の時に、Teens Town むさしのを立ち上げたそうですね。
神村 はい、2018年、大学3年生の時に原田さんを誘い活動をスタートしました。私は、自分が大野田小学校の4年生の頃、前身のむさしのミニタウンに参加しました。このイベントでは、小学生が約半年かけて、街づくりのコンセプトからお店の企画・運営まで行います。
店長になれるのは、5年生から。とにかく、楽しかった。特に、ままごとを超えて、実際に大人と同じことをやれている感じがありました。自分たちですべて考えることが求められます。企画だけでなく、店の設営、看板まで作らないといけない。子供なりにいろいろアイディアを出し、形にしていくわけです。
企画運営には小学生・中学生が30人ぐらい参加していましたね。イベント当日は延べ1,000人が参加する大きなイベントでした。ここで、街づくりのおもしろさを味わいました。
むさしのミニタウンは、10年間続いたと聞いています。すごく残念ですが、主催者のお子さんが大学生になってしまったり、様々な理由で終わってしまいました。
私は、この原体験から、大学は国際地域学部に進み、そこで、学術的にも街づくりを学びました。そこで、むさしのミニタウンの取組みに非常に価値があると気づき、また、ミニタウンをやりたいと思ったわけです。そんな時に、かつてお世話になった、むさしのミニタウンの方から、原田さんを紹介してもらい、Teens Townむさしのの構想が動きだしました。
原田: 私は正直なところそんなにミニタウンには積極的に参加していなかったので、ミニタウンの仕組みを十分に理解していませんでした。ただ、両親が共働きで、学童やあそべいで多くの時間を過ごしていたので、地域の人に育てられた意識が強いんです。
だから、そのような場を今の子供たちにも作ってあげたいと思って。最初は、神村の大学の友人や地域の大学生が多かったのですが、そのあとで、柴田や大塚が加わりました。
想像を超える子供の力、白地図を自分たちで埋めていく光景は圧巻だった
MM山中: 活動を通して、印象に残っていることを教えてもらえますか。
柴田: 正直、この活動に参加するまで、子供の力を信じていないところがありました。でも、昨年実施したイベントの当日、子供の力が自分の想像を超えるものがあることを気付かされました。
イベントの中で、最も人気があった宝くじコーナーがありました。そこには長蛇の列ができていました。一方で、その横のドリンク屋さんは人気がなかった。それに気づいたある子供が、ドリンク一杯買うと宝くじを引けるという、キャンペーンをその場で考えたのです。結果は、宝くじコーナーもドリンク屋さんともにハッピーに。それを見て純粋にすごいなと思いました。
大塚: 当時、子供の街づくりを専門にしている教授のゼミに入っていたのですが、その教授から、教授が若い頃、武蔵野市はすごかったということを聞いたことがきっかけで、自分から神村にコンタクトをとって、Teens Townむさしのに参画しました。
全国に、子供主体の街づくりをやっている団体は結構な数あると聞いていますが、Teens Townむさしののように街づくりのコンセプト作りからイベントの運営まで、白地図の段階から、子供がほとんど自分たちで、埋めていくところはそんなにないのではと思います。地図を埋めていく過程は圧巻そのものでした。
活動の軸はひとつでなくていい
MM山中: 活動を進める中で難しかったところを教えてもらえますか。
神村:イベントのわかりやすさ、おもしろさを訴求するのか、主体性・地域性を重視するのかで、メンバー間で意見がわれることも結構ありました。当時は判断軸がなく、ぶれぶれだったので。ファミレスでたくさん議論しましたね。
当時、会社のように、ビジョン、ミッション、判断軸があった方がいいと思い、それを作ることに一生懸命でしたが、みんなと話すうちに、活動の軸はひとつでなくていいのではと。あまり想い詰めず、今は走りながら合わせていく感じで。
世代を超えた持続的な活動に
MM山中: コロナ禍で、なかなか先が見えませんが、今後の展望を教えてもらえますか。
神村: Teens Townむさしのの活動目的である、地域で子供の「主体的に考える力」「市民性」を育むことほど、今の時代に必要なことはないと思います。実際に、昨年のイベントでは、初めての開催だったにもかかわらず、3日で100人の子供たちに来てもらいました。
親御さんからも非常に好意的な声を頂いており、地域のニーズはあることはわかりましたが、持続的に規模を拡大していくには、より多くの中高生の運営サポーターが必要となります。しかし、中学受験を機に地域から離れてしまう子も多く、そのような子も継続的に運営サポーターとして残ってもらえるような工夫や仕組みが必要だと思います。
また、私たち自身もそれぞれが本業を持ちながら、ボランティアでこのイベントを運営していますので、今後、自分たちのキャリアとともに如何にTeens Townむさしのを育てていくか考えないといけません。このあたりは課題ですが、やっていて楽しいので、なんとしてでも続けて行きたいですね。
Teens Townむさしののメンバーお勧めの武蔵野の好きなスポット、お店
神村さん お勧めは、中道通りのカフェ、La cour café
https://kichijoji-nakamichi.com/shop/135/
原田さん 西久保食堂です。お店の雰囲気、味もいいし、メニューもバランスが良くて。女性向けのおしゃれランチですが、がっつり食べれます。https://m.facebook.com/n.syokudou/
柴田さん 大学が武蔵境だったので、駅周辺が好きです。武蔵境の噴水やスキップ通り。プレイスの芝生も良かったですね。本を読んだり、思い出の場所です。https://www.musashino.or.jp/place/
大塚さん 市役所通りの桜並木がいいですね。武蔵野市の環境を大切にする街づくりの姿勢がわかる景色です。
https://musashino-kanko.com/area/mitaka_kitaguchi/cherry_road/
編集後記
子供に地域で「主体的に考える力」「市民性」を育んで欲しいという、強い想いで始まった、Teens Townむさしの。メンバーと熱い想いとそれを形にする行動力に無限の可能性を感じました。そして、その原点が10年以上前に市民活動として親世代が企画した、むさしのミニタウン。想いは世代や形を超えて継承される。Teens Townむさしのが、どのように活動を深め、広げ、さらに次の世代に繋げていくのか楽しみです。