武蔵野市吉祥寺北町(成蹊学園西側)に「濱家住宅西洋館」という国の登録有形文化財があるのをご存知でしょうか?
「濱家住宅西洋館」は1924(大正13)年に竣工した建物で、築100年を迎えます。
成蹊学園の職員用住宅としてアメリカから輸入されたツーバイフォー工法の組立住宅5棟のうち唯一の現存建物です。
学生寮として使われていた「有定寮」を、1932年に濱家が学園より譲り受け、2010年に登録有形文化財となりました。
その後、2013年に濱家の所有地の一部が公園用地となり、曳家を伴う減築と修復工事が行われました。
さらに100年建ち続けられるようにとの思いで修復工事が行われました。
濱家住宅西洋館は戦前期のツーバイフォー建築や輸入住宅の導入史などにおいて、極めて貴重な建物です。現存する当時の輸入住宅は少なく、この建物を保存していく意義は大きいです。
さらに、武蔵野市の歴史を語る上でも、成蹊学園の成り立ちやその後の学園都市としての発展などの貴重な資料でもあります。
存続の危機
そんな貴重な濱家住宅西洋館ですが、存続の危機が訪れています。
相続等の理由から濱家個人での所有が難しくなり、所有権は現在東急リバブルへ移っています。
有形登録文化財とはいえ、国からの補助はそう多いものではなく、相続に関する優遇措置もあるものの、武蔵野市のように土地価格の高い場所ではそのまま個人所有し続けていくことは難しくなっています。
通常、不動産会社が土地を取得する場合、上モノ(建物)は重視されず、こうした歴史ある建物でも更地にしての売買になることが多いようです。
今回は東急リバブルが濱家の希望を汲む形で建物を残したまま土地を取得されたようです。
とはいえ、宅地である現住所で商業的な利用は難しく、土地は販売される予定で、この貴重な濱家住宅西洋館の存続は不透明なものとなっています。
継承へ向けて
そんなタイムリミットが迫る中、2023年8月18日に濱家住宅西洋館にて継承に向けての勉強会と見学会が開催されました。
基調講演に神奈川大学特任教授の内田青蔵先生から「濱家住宅西洋館:学園都市に持ち込まれたアメリカ式組立住宅」と題して、輸入住宅の歴史やこの建物の重要性教えていただきました。
旧赤星邸の保存活動にも関わられた玄田悠大さん(東京大学大学院)のお話や、武蔵野市の文化財保護委員でもある村井寿夫さんによる継承の可能性とその提案を伺いました。
隣接する木の花小道公園への曳家の可能性や、現在の公園自体の価値、旧赤星邸へ移築出来ないか?など様々な意見が出ておりました。
濱家住宅西洋館の今後の動向
濱家住宅西洋館の今後はまだまだ不透明です。
しかし、この貴重な建物がここ武蔵野市にあり、さらにそれが存続の危機に瀕していることはあまり知られていないです。
まずは、知ってもらうこと。
そして、多くの人が関わることで、良い方向が見えてくると思っています。
Meetむさしのでは今後も濱家住宅西洋館の情報が入り次第、お伝えしていきます。
濱家住宅西洋館に関するその他の情報
武蔵野市公式サイト 市内の文化財と民俗資料
※武蔵野市内の国登録有形文化財(建築物)は3件しか存在しません。
日本獣医生命科学大学一号棟(旧東京市麻布区役所庁舎)、旧赤星鉄馬亭、そして今回の濱家住宅西洋館です。