三鷹駅北口の景色が変わるかもしれない。。。

北口の交通環境が大きな変化を迎える、
2030年代の北口の目指すべき街の姿を考える取り組みが、
2017年から、住む人、働く人、そして、行政が一体となり、進められている。

変化をきっかけに、「まち」が、「住む人、働く人が集い、心地よく過ごせる、そんな「歩行者中心」のまちに生まれ変わるのが望ましいが、どのような変化が起こるのかを、慎重に検証をしながら、計画を作り、進めていく必要がある。

検証のために、用いられているのが、「社会実験」という政策手法だ。

「ENJOY! OPEN TERRACEs 武蔵野」という名称で、複数回行われている「社会実験」では、北口周辺のパブリックスペース(歩道)にテーブルやイスを設置し、日常的な利活用やにぎわいの創出の検証を行っている。

今回、三鷹駅北口街づくりビジョンを所管し、社会実験を進める、武蔵野市まちづくり推進課の尾身さんに「社会実験」を中心にお話を伺いました。

尾身裕太郎さん プロフィール
武蔵野市 都市整備部 まちづくり推進課
大学卒業後、武蔵野市役所に入庁。
大学在学中に、武蔵野市のごみ総合対策課、クリーンセンターでインターン。武蔵野市政に関心を持つ。
入庁後、市政センター、企画調整課等を経て、2021年より現職。
学生時代から過ごした武蔵野市への愛着が強く、三鷹駅から市役所につながる、「かたらいの道」はお気に入りの一つ。


社会実験が行われた経緯を教えてください。

武蔵野市では、「三鷹駅北口街づくりビジョン」(以下、街づくりビジョン)を2017年に策定しました。これは、補助幹線道路の整備により、三鷹駅北口の交通環境が大きな変化を迎える、概ね10年後の街の方向性と目指すべき街の姿を描き、その実現に向けた取り組みを示したものです。
街づくりビジョンの範囲は三鷹駅北口を南端に、三鷹通り、井ノ頭通りと玉川上水によって囲まれる、概ね東西400m、南北450mの約18haの範囲を対象にしています。

駅前には、オフィスビルや飲食店が多いですが、マンションも多く居住エリアもある印象です。

そうですね。住む人や働く人が混在する地域です。
街づくりビジョンでは、「住む人、働く人が集い、心地よく過ごす街」を目指すべき姿として掲げています。

私も三鷹駅北口を歩行者として利用していますが、特に通勤・通学の時間帯ですと、バスやタクシーの発着と歩行者が錯綜するエリアがあって、結構、駅前を歩く際に気を使わないといけない感じがします。
最近は、自転車もかなりスピードを出して走っていくことも多いので。

三鷹駅は、中央線の中でも、乗降客数が上位に入るほど、利用者が多い駅になっています。また、オフィスも多く立地していて、通勤者も多いのが特徴です。
北口の駅前広場は1949年に整備を行いましたが、交通量が計画時に比べ増加し、車両と歩行者の交錯などが課題となったため、2011年度に、バス降車場の移設により交錯を改善する暫定整備を行いました。
しかし、現在の交通量に照らせば、駅前広場の区域は小さく、雨天時には人の流れが滞ることもあるなど課題があります。

そこで、これからそのような課題にチャレンジして、「歩行者中心」のエリアにシフトしていきたいとお考えになったのですね。

そうですね。街づくりビジョンの「交通環境」の視点において、補助幹線道路より南側の駅周辺を「歩行者を中心とするにぎわいのエリア」として位置づけ、新たな交通体系を構築したいと考えています。

社会実験についても教えてください。

駅周辺のパブリックスペースを住む人や働く人にとって、価値あるものに変えていきたいと考えます。
どのように利用できるのか、利用により、歩行者や周辺の賑わいにどのような影響があるのかを具体的に検証する必要があります。

そこで、地域の商業者・住民・企業の方と一緒に三鷹北口街づくりラボを立ち上げ、ワークショップなどを通して、みなさんとパブリックスペースの活用について学んでいきました。
その中で、どのような「社会実験」を行うかのアイディアを話し合いました。

社会実験は海外では結構行われていますが、日本だといろんな規制で実施が難しいとも聞きます。実施を決めるのは大変だったのではないですか。

私は当時の担当ではなかったので、詳しいことはわかりませんが、関係機関との調整も大変だったようです。
「ENJOY! OPEN TERRACEs 武蔵野」の前に、車道を車両通行止めにして歩行者のための空間に活用した社会実験(ENJOY! OPEN STREETs武蔵野)の実績があったことや、コロナ禍で国交省から道路占用の緩和措置がなされたことは、実施に向けてポジティブな影響がありました。

始めて行うことは何事も大変なことも多いと思いますが、他にも大変だったことはありますか?

テラスを置ける場所探しや協力店舗を募るのが大変だったようです。
やはり、日常的な利活用の可能性を図る「社会実験」の意義を伝えるのも難しく、具体的にどのようなメリットを得られるか、お示しすることができないことはありました。

コロナ禍で中止がありましたが、「社会実験」も2回目の実施になり、実績が積みあがってきていますが、社会実験による、検証は進んでいるのでしょうか。

道路を活用することによる歩行者への影響や、テラスの利用状況などを実施調査やアンケートなどで検証しています。
利用者からの満足度や今後の利用意向は高く、「ENJOY! OPEN TERRACEs 武蔵野」は、概ねポジティブに受け入れられていると感じています。
「開放感があり、居心地が良い」、「オープンテラスがあることで街に潤いが感じられる」といった利用者の声や「テラス席が満席になる時間帯もあり、売上に一定貢献したと感じる」といった協力店舗の声も頂きました。

個人的には、「ENJOY! OPEN TERRACEs 武蔵野」の構想をどんどん具体化して、広めていってほしいですね。
私は学生時代に米国のカリフォルニアにいましたが、市民が週末にダウンタウンのパブリックスペースでマルシェやカフェを楽しんでいました。
すごく、心地よい空間で、市民同士の交流も気軽にできてよかった記憶があります。

「ENJOY! OPEN TERRACEs 武蔵野」の社会実験の取り組みは少しずつですが、市民にも認識してもらってきていると感じています。
民間主体によるパブリックスペースの利活用の例としては、タワーズマルシェ@むさしの(むさしのマルシェ実行委員会)が自主的に、継続的に利活用を行っています。
今後も多くの市民の方にこの取り組みに参加していただけると嬉しいですね。

最後に今後の展望を教えてください。

まずは街づくりビジョンの実現に向けて、補助幹線道路の整備後の街の姿を市民の皆さんと共有して、どのような歩行者中心の街づくりができるのかを検討していきたいと思います。
そのためにも、社会実験を継続して、多くの方と将来の街の姿について一緒に考えていきたいですね。


編集後記

三鷹北口の未来づくりが始まっている。2030年代には、もしかしたら、交通の流れが変わり、北口のロータリーでゆっくりとカフェやイベントを楽しんだりする日が来るかもしれない。インタビューを通じて、そう感じた。市はこれからも、社会実験を通して、様々な影響を検証していくようだ。受益者であるわたしたち市民がどんなまちにしていきたいのか、積極的に考えていきたい。

About the Author

山中敦志

Co-Founder

武蔵野市吉祥寺北町在住、一児の父。学生時代にアメリカに留学、市民主体の自治に関心を持つ。 企業で環境・社会関連の業務に従事する傍ら、地域から自然エネルギーの普及を目指す、 NPOむさしの市民エネルギー(むーそーらー)やNPOみたか市民協同発電で地域活動を行う。 市民、市民団体、行政、企業の接点を創出し、社会的課題の解決すべく、MMの立上げに参画する。 武蔵野市のおすすめスポットは市役所隣の市民公園です。週末には市民公園の奥にあるフットサルコートで息子と近所の子供たちとサッカーをしています。

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About the Photographer

上澤進介

Co-Founder

武蔵野市関前在住、二児の父。1976年神奈川県川崎市生まれ。栃木県鹿沼市育ち。多摩美術大学を卒業後、建築設計事務所、広告制作会社を経てWeb制作会社を起業。子育てのために武蔵野市へ転居。会社も武蔵野市に移転して職住近接を実現。地域活動に関心をもち2017年2月から武蔵野市「地域をつなぐコーディネーター」の一期生としてコミュニティ活動に関わる方々と学びを深めている。 武蔵野市のおすすめスポットは三鷹の堀合遊歩道から中央公園へ続くグリーンパーク緑地です。子供たちと遊びながら中央公園へ向かうのが楽しいです。