「まちカタルカ」というカードゲームが誕生しました。

「まちカタルカ」とは、カードを引いて「まち」についておしゃべりするカードゲームです。

カードゲームで遊びながら、いつの間にか「まち」について知ることができたり、いつの間にか仲良くなることができちゃうカードゲームです。

今回インタビューする徳永さんは吉祥寺への愛を集めた「吉祥寺かるた」を2019年に制作し、2021年11月1日に「まちカタルカ」というカードゲームをリリースしました。

今回のインタビューでは、その「まちカタルカ」について語(カタ)ってもらいました。

「吉祥寺かるた」とは「吉祥寺の魅力」「吉祥寺の名所・名物」「吉祥寺あるある」などなど、みんなの好きな「吉祥寺」を46枚の言葉とイラストで表現した、吉祥寺の「ご当地かるた」です。2021年度グッドデザイン賞を受賞しました。

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『まちカタルカ』は、カードを1枚引くだけで、いつでもどこでもそんな「まちのおしゃべり」が始まって、「まち」への偏愛が溢れ出しちゃうトークテーマカードです。

2019年に「吉祥寺かるた」を作り、そして2021年11月に「まちカタルカ」を作られたのですが、そのつながりを聞かせてください。

「吉祥寺かるた」を作って一番面白いなと感じたのは、「まちのおしゃべり」というものが持つ力でした。今まで知らなかった人同士でも、同じ「まち」を共有しているというだけで、かるたに書かれた情報に共感して、まるで何年も知り合いだった同士みたいに会話がどんどん発展していくんですよ。
その「まちのおしゃべり」をどこでも再現できたらいいなと思って、ツールとして形にしたのが「まちカタルカ」なんです。

「吉祥寺かるた」を作った時によく言われたのが、「吉祥寺みたいな華やかな街だからかるたが作れるんでしょ」ということでした。でも、本当はどんな街でもかるたをひとつ作れるくらいのエピソードはあると思うんです。「まちカタルカ」では、それを引き出したかった。

「まちカタルカ」は、語るための場所がなかなかない現代で、語れる場を作り出すツールだと感じました。

そのとおりですね。
みんな、それぞれに自分の生まれた街や住んでいる街に思い入れや大切な記憶を持っています。ただ、街の話をわざわざ掘り下げる機会なんてなかなかないから、普段は気がついてないんですよね。だからそこに「トークカードをめくる」というきっかけを与えてあげる。そうすると、みんな街の話をし始めてくれるんですよ。そして、話し始めると、「発見と共感」で話がどんどん広がっていく。この「まちカタルカ」がファシリテーターになって「まちのおしゃべり」を引き出してくれる感じですよね。

昨日もあるイベントで、自己紹介の時に「まちカタルカ」を使って自分の住んでいる街の話をしてもらったんですが、全然行ったこともない街の「喫茶店のマスターの話」や「お得なスーパーの話」「人生で食べた一番美味しい焼肉の話」などを次々聞くことはできました。
そして同時に、その街のことなんて知らないはずの初対面同士の方たちの間に、「わかる!」とか「行ってみたい!」とか、不思議な一体感が生まれたんです。
そんな風に「地域」というたしかなものを間に挟むことで、文字通り地に足のついた共感のようなものが生まれて、コミュニティの醸成が一気に進むのを感じました。

今後地域へどう関わっていきたいでしょうか?

これまで「吉祥寺かるた」「キチモン」「まちカタルカ」などを作ってきました。今後も「デザインと遊びでコミニティを楽しく育てる」というテーマでいろんなことに取り組んでいきたいと思っています。

将来的には「地域コミュニティ」ということに限定せず、広い意味でのコミュニティ、つまり「会社のかるた」とか「家族のカード」とかもありだとは思っていますが、今は、まず「地域」についてもう少し深めていきたいです。

コロナでオンラインでの仕事が普及して、場所を選ばなくなった今だからこそ、「地域」の存在感が増していると言うか、地域に帰属したい気持ちが強くなっているのを感じているんです。

そういえば、地域ということで言えば、ちょうど今、吉祥寺のイーストサイドエリアで、武蔵野市開発公社さんと一緒に「吉祥寺イーストサイドカルタ」というものに着手しています。

「吉祥寺かるた」の段階でも十分ニッチだったんですが、今回の企画対象エリアは吉祥寺の、さらにイーストサイドだけです。吉祥寺の中でも特にニッチなこのエリアを対象にすることで、今後制作の過程で、相当ディープなものができてくるんじゃないかなと楽しみにしています。

吉祥寺のイーストサイドとは、吉祥寺を東西南北に4つに分けた東側のエリアです。ヨドバシの裏や末広通りなど裏吉といってもいいおもしろいお店や風景のあるエリアです。吉祥寺イーストサイドを盛り上げるために、吉祥寺「イーストサイドアクティベーション」プロジェクトも始動しました。プロジェクトの中では、吉祥寺かるた×吉祥寺図書館のコラボなども実現しており、「吉祥寺かるた」が街を楽しくするパズルの1ピースとなっています。

地元愛が生まれるきっかけは何でしょうか?

地元愛って、あんまり普段は意識していない人が多いんじゃないかと思います。例えば、先日その「吉祥寺イーストサイドかるた」の制作ワークショップを開いたんですが、参加者の皆さんはイーストサイドに在勤在住の方がほとんどなのに、普段は「イーストサイド」なんていう括りを意識して暮らしているわけじゃない。地元愛はあっても、それは潜在意識の中に眠ってる感じなんです。「イーストサイド?なにそれ?」くらいな感じ(笑)

でもそこに、「イーストサイドのかるたをつくるんだけど、どんな札がいいと思う?」という質問がひとつ投げられると、自分の中にある地域のいろんなシーンを探しに行くんですよ。そうすると、地元というものが潜在意識から顕在意識に上がってきて、短い言葉での「言語化」が一気に進行する。

ワークショップの中では「30分間街の中を歩いてきて、15分で札を作ってください」というワークをやったんですが、そしたら、結果、十数人の参加者から70枚くらいの札が生まれたんですよ。

70枚!すごいですね!

そうなんです。感動的でした。
皆さんの書いた70枚の札が壁に張り出されてシェアされると「なにそれ?」だったイーストサイドが「ああ、私たちみんなが暮らしている街はこんな姿をしているんだ」という「発見」と、地に足のついた「共感」に変わる。

ただこれ、もし「街の好きな所はどこですか?」というひとつの質問だったとすると、「美味しいお店がいっぱいある」と言った当たり障りのない回答しか出てこないと思うんですよ。誰にでも受け入れられる「正解」を答えないといけなくなるので。

でも、かるたには、札が46枚もあるので、みんな「自分の目から見た風景」を語ることができる。まったく違う46枚の「パーソナルな偏愛」を集めて46面体をつくることで、地域愛の全体像が見えてくるんです

地元愛はパーソナルをどう引き出すかだと思いました。普通な答えだけでは地域は彩れないですよね。

そうですね。結局、地域というのもパーソナルの集合体なので。みんなの共通項にまとめてしまうとどこの街も似通ってしまいますが、パーソナルな偏愛を46面体のまま眺めたら、その地域の個性が見えるんじゃないかと思います。

地元愛が46面の形で表されるっていいですね。
先ほど話にあった吉祥寺イーストサイドかるたのワークショップで、70枚のかるたの札が生まれた。すなわち70個の地元愛が生まれたと思うのですが、その場面を見てみたいと思いました。

(ワークショップの写真を見ながら)こういう状態でした。潜在意識下にあった偏愛が、顕在化して、言語化されて、シェアされた瞬間です。これがさらに「かるた」という遊びになってみんなを巻き込んでいくと、コミュニティが一気に熱くなってくるんです。

吉祥寺イーストサイドかるたは、クラウドファンディングも予定していると聞いてます。

そうなんです。クラウドファンディングでは、経済的支援はもちろんなんですが、「読み札の支援」も募集します。支援者の方にも一緒に読み札制作に参加してもらって、より広く偏愛を集めたいと思っています。

「吉祥寺イーストサイドかるた」は、人気の街・吉祥寺にあって最も「個性的」で、最も「エネルギッシュ」で、最も「ディープ」なエリア「吉祥寺イーストサイド」の魅力を「かるた」を作ることでもっとみんなに知ってほしい!という想いで進められている、「吉祥寺イーストサイドかるたプロジェクト」によるプロジェクトです。

「吉祥寺で最もディープなエリアはここ!「吉祥寺イーストサイドかるた」プロジェクト」としてクラウドファンディングを進めています。

「吉祥寺かるた」や「まちカタルカ」の制作の中で、余白を意識していますか?

いつでも誰でも参加できるスペースを開けておく。いつでも誰でも入ってこれるというのは意識しています。かるたの一番の魅力はとにかく「参加障壁」が低いということです。日本人なら全員ルールを知っているし、「かるた作りましょうよ」と問いかけるだけで、どんなものを作るかみんなすぐわかってくれる。その参加障壁の低さを殺さないためには、ゆるさが必要なんですね。

例えば、札を募集する時に、「ちゃんと本名書いてください」「住所書いてください」「電話番号書いてください」というルールにすると壁が高くなってしまいます。また、1等の賞金を100万円払いますという風にしたら、ダサい自分の偏愛など書けなくなってしまい、正解を当てにいってしまう。
正解は当てなくていい、あなたの偏愛をあなたのtwitterでハッシュタグつけるだけでいいよというゆるゆるのルールにすることで、偏愛が出やすくするように意識しました。

そのゆるさというか、ゆとりというか、そこが余白と言えるところかもしれません。

おお!そういえば、「まちカタルカ」も札を一枚引くだけで誰でも参加できますね。

そうですね。「まちカタルカ」の質問も、吉祥寺みたいなおしゃれな街や大きな都市じゃなくても捻り出せるようなゆるい質問にしています。

あとは正解が一個しかない質問にならないようにとすごく意識して作りました。
「一番よく行くお店は?」という質問ならひとりひとり全員違う答えがありますけど、「一番人気のお店は?」という質問にすると、答えがひとつになってしまう。みんなに否定されない正解を当てにいってしまうようになるんですよね。

運命を「まちカタルカ」の制作の中で感じましたか?

はい。感じました(笑)

今回、イラストを担当してくれたのはキン・シオタニさんなんですが、キンシオさんとの出会いは、Beyond Laboという吉祥寺中心に教育系のイベントをしている団体さんが主催のイベントにキンシオさんが出演していたときで、僕は出待ちをして、いきなり「ぼく、吉祥寺のかるたを作ってるんで送らせてください!」って変なナンパをしたんですよ。そしたら、それが響いたのか、その数日後にキンシオさんがうちの会社に遊びに来てくれました。
その時に一緒に面白いことやろうねという話にはなったんですが、まあ社交辞令かなと思って数ヶ月放置していたら、キンシオさんのほうから「そろそろやりましょうよ」と声をかけてくれて。それで一気に進み始めたんです。

はじめは、「吉祥寺かるた」の第二弾にする?というアイディアもあったんですが、それじゃああまり代わり映えしなくて面白くないなと思いました。そのとき、僕の会社で以前制作に協力していた「シャベリカ」という「トークテーマカード」のことを思い出したんですね。それが僕の中でカチッとはまりました。

全国をお散歩する「旅するイラストレーター」であるキンシオさん×トークテーマカード「シャベリカ」×まちの偏愛を集めた「吉祥寺かるた」という3つのアイディアがぴたっと合致して出来たのがこの「まちカタルカ」なんです。導かれるべくして導かれた運命だったと思います。

自分と遊びをどう考えていますか?

僕の好きな言葉に「いきあたりばっちり」という言葉があります。目的地を先に決めて実行するのではなく、プロセスと展開を楽しみながら、結果オーライになるように運んでいく。これって、子どもが遊ぶのと同じ感覚ですよね。大事なのは遊んでいる時間そのもの。

僕は仕事についても、働いてる時間そのものが楽しいように、遊ぶように働いてたいと思っています。会社のホームページもかるた形式でメンバー紹介をしてるんですが、僕の読み札は「いきあたりばっちりで 今はかるたおじさん」というものです(笑)

「カードゲーム」ということで、紙・アナログへのこだわりはありましたか?

「吉祥寺かるた」を作ったときのテーマのひとつは「場の熱を上げる」ということでした。だからデジタルゲームじゃなくて、わざわざ集まって遊ばないといけない、紙のカードゲームを、という思いはありましたね。

ルール作りへのこだわりはありましたか?

ルールはとにかく簡単にすることですね。「かるた」はルールを説明しなくてもいいというのが最大の魅力で、「まちカタルカ」はカードを引くだけでわかるという形にしています。

楽しいと感じる瞬間はどんな時ですか?

人の偏愛に触れるのが大好きなんです。人の「ほんとそこが好きでしょうがないのね」が見えた瞬間に幸せを感じるんだと思います。

かるた作りが楽しいのも、その中で、ファンコミュニティが育つのと同じ現象が起こるからなんですね。

例えばアイドル好きの人が出会って、「あなたはどの曲が好き?」「わかる〜私はこの曲が好きなの!」といった、お互い違うのに共感が盛り上がる瞬間ってありますよね。一つの共通点を触媒にしてぶわーっとお互いの偏愛が盛り上がる。そんな瞬間が「吉祥寺かるた」の作る過程でも起こったんです。まさに「吉祥寺」のファンコミュニティが広がっていった。それがたまらなく面白くて、自分の肩書に「ご当地かるたプロデューサー」と足してしまったくらい。

そんな「まちのおしゃべり」が「ファンコミュニティ」を生み出していく瞬間をあちこちで再現したくて作ったのが、「まちカタルカ」だったというわけです。

インタビューを終えて

今回は、子供二人を連れてのバタバタののインタビューの中で徳永さんは、やさしく、そして快くインタビューに応じていただきました。そんな風にまちをやさしく見ていた徳永さんだから「吉祥寺かるた」や「まちカタルカ」が生まれたのだろうなぁと感じました。

「まちカタルカの地域への展開は?」という質問には、「まちカタルカ」をいろんな街の人に渡しており、移住者と地域のイベントの自己紹介に使ったりということにも使えるという話も伺いました。

私もBeyond Laboの二川さんの提唱していた「勝手に姉妹友好都市」とう考え方に賛同しているという話をしてみたら「まちカタルカ」を使ってみたらという話になりました。今度、私の大好きな街の島根県の益田市や山口県の周南市や山口市などでも街を語ってみることが出来たらいいなと思っています。

「まちカタルカ」であなた自身の「まちを語ってみませんか?」

どこの街でも「まちカタルカ」で自己紹介から「まち」の偏愛が見えてくる。そう感じました。

そんな街が全国で広がったらいいなと思ってます。そんな街をマップにした「全国まちカタルカタウンマップ」なども作れたらいいなと思いました。

また、「まちカタルカ」で出た街の情報から街のガイドブックを作ったりもできたり、街に引っ越してきた人向けのイベントなどにも使うことができるといったアイデアもどんどん溢れてきました。

街をもっと知れたり、楽しくすることにも使えるなど「まちカタルカ」の使い方は無限大です。

あなたの街、あなたの会社でも「まち」を語ってみませんか?

「まちカタルカ」の購入サイトですw手元にあれば思う存分「自分の街」を語れます

私も勝手にアンバサダーとして「まちカタルカ」を広める活動を勝手にしてます。

イベント情報

『みんなでカタルか吉祥寺in coppice』

2021/11/27(土)から12/16(木)に吉祥寺コピス1F ペニーレーンギャラリーにて、『みんなでカタルか吉祥寺in coppice』の展示が始まります。

パネルに書かれたトークテーマに、みんなが自分の胸のうちの風景を付箋で答えていくという参加型の展示です。

楽しく、ゆるっと、まちに関わるイベントなので、よかったら皆さん参加してみてください。

イベント名『みんなでカタルか吉祥寺in coppice』展示
期間2021年11/27日(土)〜12/16(木)
場所〒180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目8 吉祥寺コピスA館1F
PENNY LANE GALLERY(ペニーレーンギャラリー)
地図

プロフィール

徳永健さん

吉祥寺のデザイン会社「クラウドボックス」の代表取締役
クリエイティブディレクター、ご当地かるたプロデューサー。
2019年にご当地かるた『吉祥寺かるた』を制作。2021年10月『吉祥寺かるた』が「グッドデザイン賞」(コミュニティづくりの取り組み・活動部門)「私の選んだ一品」賞を受賞。
2021年11月1日に「まちカタルカ」発売。

About the Author

しげ3

Writer

就職お手伝いサイト mikkework(みっけワーク)代表、地元応援サイト「地元を応援したいんだ!」管理人、「吉祥寺テイクアウトMAP」管理人、Code for Mitaka/Musashino所属吉祥寺同好会所属、ブックマンション棚主、SE(本職)など、いろいろ頭を突っ込んじゃう人ですw

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